千葉ニュータウンの東部、印旛日本医大駅周辺は、美しい街並みが印象的な新しい街。 けれども、そこには約 1300年前の奈良時代から「松虫姫伝説」が残っています。
◆松虫姫伝説
東大寺を建てた聖武天皇の第三皇女「松虫姫」は、とても美しい姫でしたが、年頃になって重い難病にかかりました。 あらゆる治療の手を尽くしましたが病は重くなるばかり。 ところがある夜、天皇に夢のお告げがありました。「坂東(現関東)の下総(現千葉県)に効験あらたかな薬師如来がある」。 天皇は藁にもすがる思いで姫を下総に向かわせました。坂東は役人の目が届かないような地で、その恐ろしさに京からの従者は数人逃げ、国府(現市川市)に着く頃には杉自という乳母と数人の従者だけとなり、やっとの思いで印旛沼のほとりの萩原郷(現印西市)にたどり着きました。 薬師堂は豊かな水の湖沼を見下ろす丘の上にありました。萩原郷は人家もまばらな貧しい村里で、一行は心細く思いましたが、薬師如来にすがるほかなかった松虫姫は、暑い日も寒い日も一心に祈りました。従者達も機織りや裁縫、養蚕など都の技術を村人に教え、馴染んでいきました。数年が過ぎ、松虫姫はすっかり元気になり都へ戻ることになりましたが、都の技術を広げるため杉自を村に残すことに。都から姫を乗せてきた牛も年老いていたため残しましたが、姫と一緒に帰れないことを悲しみ、近くの池に身を投じました。 病の癒えた松虫姫を見て喜んだ聖武天皇は、僧・行基に命じ七仏薬師如来像を祀った松虫寺を建立させました。
◆松虫寺まで散策!
印旛日本医大駅の改札を出て少し歩くと、松虫姫公園が見えてきます。 中央には松虫姫を乗せた牛の像があり、側には牛が身を投じたとされる「牛むぐりの池」。牛がどんなに姫を思っていたのか…と思いを馳せます。
公園から国道464号線を渡って次の交差点を右に入ると、のどかな道が続き、松虫寺に到着。
緑の中に赤い屋根の仁王門が迎えてくれる松虫寺は、奈良時代に建てられたもの。平安時代後期の七仏薬師如来像が伝えられ、「房総の魅力500選」に選ばれています。 仁王門と薬師堂は1718年、徳川吉宗の時代のもの。 薬師堂の裏には、松虫姫亡き後分骨された「松虫皇女之御廟」が残っています。
薬師堂の両脇には松虫姫神社と六所神社があり、松虫姫が使っていた杖が根付いたという「お杖の銀杏」が敷地内に残っています。
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松虫寺の薬師堂は趣があり、松虫姫神社は屋根の下の木鼻や手挾がカラフルで、懸魚に雛菊があしらわれるなど、美しかったといわれる松虫姫を思わせます。 また、6月には色鮮やかな紫陽花が楽しめるそうです。
松虫寺
【住 所】印西市松虫7
【駐車場】有(道が細いので注意)
【お問合せ】(印西市経済政策課地域資源振興班)☎︎0476-33-4477(土日は除く)