【安房郡】表情豊かな羅漢様達に出会う旅 鋸山を巡る

 今号は出張特集!鋸南町と富津市の境にある「鋸山(のこぎりやま)」に登ってきました。
 鋸山は日本百低山に選定されている標高約300mの山。南側斜面10万坪余りは関東最古の※勅願所(ちょくがんじょ)「日本寺」の境内となっており、日本最大級の大仏や大迫力の石切場跡、スリル満点の地獄覗きなど見所がたくさんあります。
 今回は最寄の保田駅から徒歩で向かい登りましたが、隣駅の浜金谷駅からロープウェイで景色を楽しみながらラクラク登り下りすることもできます。日本寺の境内は道が舗装されており歩きやすく、登山に挑戦してみたい方にはおすすめの練習スポットです。
※勅願所…天皇・上皇の発願により、国の安泰などを祈願するために作られた神社や寺院。

①保田駅からスタート
 2月下旬、日曜日の10時過ぎ、JR千葉駅から内房線の電車に90分ほど揺られて鋸山を目指します。車窓から菜の花や河津桜が見え、春の訪れを感じます。

天気も良く海も見えたので、車で来ても良かったかな〜

 鋸山の最寄り駅「保田駅」につくと、さっそく鋸山に続く遊歩道の矢印が。矢印を追って20分ほど歩くと、日本寺の表参道の入り口らしき場所に着きました。ここからはひたすらに石段を登っていきます…。この時点でけっこう汗をかくので、着脱しやすい格好がおすすめです。

こういう看板が点々とある
日本寺までの道は石段で舗装されています。が、なかなかキツイ(笑)

②いざ境内へ
 石段を登っていくと、赤い仁王門が現れ、迫力のある金剛力士像に思わず足が止まります。仁王門を抜けると、受付の管理所に到着。参拝料を払い、大仏を目指して自然豊かな道を進んでいきます。

迫力がすごい金剛力士像

③実は復興中のお寺だった
 まずはお参りを、と思ったのですが、日本寺には法堂がありません。実は日本寺は昭和14年に起きた山火事で法堂を含む建造物や仏像などの文化財を焼失してしまったお寺なのです。その後も戦争による荒廃や諸々の理由で復興が遅れ、現在も復興作業が続いている状態です。大仏の広場に行く途中に薬師本殿(仏殿)があるので、そちらにお参りしました。(法堂は現在再建中)

薬師本殿

④日本最大の磨崖大仏と対面
 順番に建造物を見て歩いて行たら、突然広場に出ました。目の前には大きな大仏が…私を…見下ろしている…!仏様を目の前にしたら、こんな感じなのかなあと想像してしまいました。
 日本寺の御本尊は薬師瑠璃光如来(やくしるりこうにょらい)という病苦を救う医薬の仏様。なので、左手には薬壺を持っています。
 大仏の目の前には景色を一望できる休憩所、お守りなどが売られている売店があります。(ここで御朱印帳を忘れたことに気づく)

総高は31.5m。
見る角度によっては表情が少し変わります

一面の続き
⑤頂上到着・地獄のぞき
 大仏を堪能して一休みしたら、山頂展望台を目指し、また石段を登っていきます。決心して登り始めたものの、大仏の広場から20分ほどで着いてしまいました。
 山頂からは東京湾と房総の山を一望できる大パノラマが広がっており、疲れも吹っ飛びます。

東京湾を一望!
フェリーも見えました。

そんな中、崖の手すり越しに長蛇の列が。地獄のぞきをするために並んでいる列のようで、少し異様な光景でした。並んでいると崖の断面が見えるのですが、まっすぐな絶壁になっており、まさに切られた石(後述参考)でした。自分の順番になり、意を決して下を覗き込むと…足が…すごくすくむ!けど、下になにやら…苔むした…神秘的な空間が広がっている…!?
いざ、向かいます!

地獄のぞきに並ぶ人たち
まさに切られた石
なにか見える…(白目)

⑥人工的な石の壁・百尺観音
 頂上から階段を下っていくと上から見えた空間に辿り着きました。先ほどの崖のようにこの空間も岩がまっすぐに切られており、人工的なものを感じます。
 鋸山は房州石(ぼうしゅういし)という加工しやすく火に強い、建築資材に適した石が採れる山で、江戸時代から昭和にかけて盛んに石が切り出されて運ばれていました。どこか人工的に感じるのはそのためなんですね。
 神秘的な雰囲気に飲まれていたら壁に掘られた大きな観音様を発見。太平洋戦争の戦没者や交通事故の犠牲者の供養のために彫られたものだそうです。その名も百尺観音。名前通り百尺=30mあります。

百尺観音
足元にお賽銭箱があります
ラ○ュタみたい

鋸山の表情豊かな羅漢様たち
羅漢…阿羅漢の略。仏教において最高の悟りを得た、尊敬や施しを受けるに相応しい聖者のこと。

⑦東海千五百羅漢
 東海千五百羅漢道という羅漢様の集落スポットを回りながら下山していきます。これがまた羅漢様たちの表情がとても豊かなんです。知り合いの誰かに似ているような…?不思議な感覚になります。ですが、なぜか首のない羅漢様も多くあります。これは明治初期に起きた廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)という仏教を廃する運動で壊されてしまったものなのだそうです。

首がない羅漢様が多くあります

あとがき
 年が明けてから初めての遠出でした。いろんな表情とサイズの石仏像様達と出会ったことで、心の忙しさを見透かされているような、慰められているような気持ちになりました。
 余談ですが、金谷は大ぶりで脂がのった「黄金アジ」が名物で、アジフライの美味しいお店が多いそうです。参拝前に食べに行くのもいいですね。また、内房線の電車は本数が少ないので、必ず時刻表を確認してから鋸山に向かいましょう。

鋸山 日本寺
【所在地】安房郡鋸南町元名184-4
【アクセス】ロープウェイご利用の場合は「浜金谷」駅下車(ロープウェイの時間要確認)
日本寺表参道からのぼる場合には「保田」駅から遊歩道
【参拝時間】8時〜17時(冬期は日没まで)
【参拝料】大人700円/子供(4歳〜小学生)400円
【お問合せ】☎︎0470-55-1103
※17時を過ぎると山道は暗くなります。時間に余裕を持って伺いましょう。
※歩きやすい靴で参拝しましょう。

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